「大きい女の存在証明」 デイ多佳子著 正直に言って、この本を読むのは少しつらかった。私は身長170センチ。母親も16 3センチで四十年前には「嫁のもらい手がない」と言われたほどの、親譲りの長身女性だ。 長身のコンプレックスに正面から立ち向かった「自称176センチ」の著者の主張の一 つひとつが、とてもよく理解できてしまうのだ。 「個性の国アメリカから」「大きい女にとっての〈女らしさ〉とは」など五章で構成。日 本で無神経に浴びせられる言葉の「暴力」、「高背=男っぽい」という偏見で女らしさを 否定する人々の意識などを、実体験を基に一つずつ検証。何気ない言葉の奥に根ざした偏 見と、それに傷つきながら真面目に声を上げることすら許されない社会で生きる著者の閉 塞感が明らかにされている。 「あいかわらず大きいですなあ」「ちょっと横に並んでみて」ー。こう言われ続けた著者 は渡米し十年間たって、初めて自分が女性であるという意識を持つことができたと告白す る。そして、「この次の十五年で、私は女としての自尊心を、生まれて初めてプラスに持 って行かねば、死んでも死にきれないと思っている」とつづっている。 ほかに全米で結成されている背の高い男女のクラブの会員へのインタビューなど、米国 で声を上げる人たちの声も紹介している。 著者はネイティブアメリカンの社会や米国の日系人強制収容のルポルタージュを手がけ ているノンフィクションライター。本書も私的な憤りにとどまらず社会的な問題として実 証的に描いているため、背の高くない人たちにも興味深く読めるだろう。 彩流社刊。1600円。 【松田葉子】