身体差別・侮辱裁判

<「デブ」侮辱罪>被告側の上告棄却…1、2審判決が確定へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060913-00000094-mai-soci



 飲食店の女性客を「デブ」とけなしたとして侮辱罪に問われた山梨県大月市議、小俣武被告(55)に対し、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は11日付で、被告側の上告を棄却する決定を出した。侮辱罪の法定刑で最も重い拘留29日とした1、2審判決が確定する。小俣被告はえん罪と主張していたが、刑務所や留置場などの刑事施設に29日間拘束される。


 1審・都留簡裁判決(1月)などによると、小俣被告は04年9月30日夜、大月市内のスナックで、知人の男=科料7000円が確定=とともに、客として居合わせた初対面の20代女性に「おいデブデブ」「そんなに太ってどうするだ」「ドラム缶みていだな」などと言って侮辱した。女性の夫に注意されると「デブをデブと言って何が悪い」と開き直った。

 小俣被告は「店の経営者に『ママさん、太ったな』『この店にはデブが多いな』と言っただけ」などと主張したが、1、2審は「経営者は太った体型ではなく供述は信用出来ない」として退けていた。【木戸哲】(毎日新聞) - 9132044分更新

 侮辱罪に問われた小俣武という男は、山梨県大月市の現職市会議員だったそうです。しかも、小俣被告は公判で、一貫して「見ず知らずの女性にそんなことを言うはずがない」と主張し、「冤罪の典型だ」として控訴したそうです。ところが同席した小俣市議の知人は一審で事実を認め、7000円の罰金ですんでいるとのこと。往生際が悪いともっと泥沼にはまるパターンのようです。それにしても、事件は2004年9月30日夜のことです。「デブ」と言った言わないで丸2年も争うなんて、被害者の女性の苦痛も大変なものだったでしょう。なぜ裁判は、そんなに時間がかかるのでしょうか。


 ただ、この女性被害者は訴えを起こしたわけではなく、ただ飲食歓談しているときに暴力的な言葉を浴びせられたので、すぐに最寄の警察署に被害届けを出しただけらしいのです。地元警察署はよっぽどヒマだったのか、それとも市議会を超える権力を示したかったのでしょうか。異例なほどの執拗さで被告を告発したということです。被害者の女性は、ある意味でラッキーだったとも言えるでしょう。そして、裁判で勝ったのですから、ほんとによかったです。何やら想像するに、「デブと言われた」と被害届けを出しても、まともにはとりあってもらえないという感覚が、大足のシンデレラにはありますから。


 しかし、こういう裁判があって、加害者が罰せられるようになって、非常にありがたいことだし、希望が出てきました。やはり前例があると、これから、「デブと言ったら、訴えられるかも」という抑止力が働いて、面と向かって「デブ」と言えなくなるのではないでしょうか。しかも、見ず知らずの人間に対して、です。そして、その意識が、「デブ」だけではなく、「大きいなあ」「結婚できないなあ」などなど、さまざまな身体的特徴にまで広がっていくことを願うばかりです。 それにしても、今回の事件は、店の中で客としていたという、閉鎖的な空間かつ時間的にもそれなりの時間が経過して起きたのでしょうから、目撃者もいただろうし、女性の夫もそばにいたようですから、これはもしかしたら、妻を侮辱された夫と馬鹿な男の闘いだったかもしれません。

 

大足のシンデレラのように、通りすがりや電車の中、エレベータの中で、それも侮辱が一瞬のこと、となると、目撃者もいないし、加害者の特定も、加害者を警察に突き出さない限り、被害届を出しても、まだまだとりあってもらえない要素は大きいかもしれません。それにしてもやはり、すばらしい裁判とその結果です。社会が少しずつ変わっているのではないか、変わることが期待できるのではないか、とうれしくなりました。


 今ならきっと、「お前みたいな女、金を払っても寝る男はいない」と言われたあの時点で、警察に被害届が出せるのかも。会社という閉鎖的空間で、周りにもそれを聞いた同僚たちがいっぱいいたわけですから。。ああ、こういう風に書いていると、言ったあの男の顔を思いだしてきました。ああ、いやだあ。。。くそっ。。(笑)


 私の本の中でも書きましたが、中田京さんという元市会議員の人も、同じ議員の男に「男いらず」と公に侮辱されて、セクハラ裁判を起こし、勝訴されてます。(この部分は、かつては中田さんのホームページに載っていたのですが、最近チェックすると削除?されたようです) 市会議員になる男って、けっこうたちの悪いのが多い???(笑) 

 

こういう言葉は使いたくないんですけど、「デブ」といえば、知人のこんな話があります。アメリカ人のご主人と日本に行ったときのこと。ご主人はお腹がまあるく前に出ているそうです。アメリカ人ならありふれた体型といっていいでしょう。すると、日本人がそのお腹を指して、聞いたそうです、「今、何カ月」と。いやですね、ほんとに。男性に向かって言うわけで、体型への言及のみならず、人格無視のほんとの侮辱じゃないでしょうか。まあ、言った人とは知合いなんだとは思いますが、そういうことを言うのが冗談だと思っている日本人の文化程度の低さというか、そういう質問は冗談ではすまされないんだという意識がぜんぜんないらしいというのが、アメリカ生活が長くなるともう信じられないような気がします。言われたご主人は、ほんとにいやがっていたそうですが、言い返せないというところが、やはり社会を吹き渡る風の強さというところでしょうか。

 

 で、思うのですけど、この場合、被害届けを出せば、警察はちゃんと受理してくれるのでしょうか。被害届けを出すか出さないか、その境界線はどこで引かれるのかな、と思いました。

 

追記

 

貴重な情報をいただきました。

 

警察には、被害届、告訴状、告発状の3種類の届け方があって、その違いは以下の通りだそうです。

 

被害届:被害の届出で、警察は何かの犯罪のおりに参考にする。警察は動かない場合が多い。

 

告訴状:被害者が加害者を特定して警察に対応を求める場合。被害者は証拠が必要。警察は必ず動かなければならないが、受理されない場合が多々ある。

 

告発状:被害者ではない第三者が犯罪を指摘し加害者を特定して警察に対応を求める場合。証拠が必要。警察は必ず動かなければならないが、受理されない場合が多々ある。

 

告訴状を書いて警察に提出しても、警察は被害届に改ざんして動かず、悲惨な事件が起きたりしているようです。改ざんなんてとんでもない話だし、告訴状にしろ告発状にしろ、受理されない場合が多々あるでは、一体警察は何のためなのでしょうか。その意味で、もし今回の裁判が、被害届だけで警察が動いた結果なら、すばらしい奇跡にも近いことではないでしょうか。(笑)ほんとにラッキーでした。判例を作ることが大事ですから。今回の裁判は、女性にとってのみならず、管轄の警察も表彰されねばならないのではないでしょうか。立派に職務を果たし、いい仕事をした、と。(笑)