和田アキ子みたい、って誉め言葉?
(人民新聞 1月25日付掲載)
先日、ここアメリカはシカゴ近郊の日本人村にあるカラオケバーへ、友達とでかけていった。友達とバーのママさんは旧知の仲だったので、すぐにママさんは私たちのテーブルにやってきた。そして、私の顔を見て言った、「この人、和田アキ子みたいね」
回りの空気が一瞬止まった。私の心も一瞬凍った。が、すぐに何もなかったかのように会話が続いた。「和田アキコみたいね」と言われて、「そうですね」と答えたかどうかはもう記憶にさだかではない。確かなことはただ一つ、「そういうことは言われたくないです」と抗議だけはしなかった、できなかったのである。
昨年9月、私は念願の半生記「大きい女の存在証明―もしシンデレラの足が大きかったら」(彩流社)を上梓した。電話での問い合わせにけんもほろろだったり、企画書だけで断わられたり、原稿を送らせてくれてほめてはくれるものの、ていよく断わられたりと、私が数えていただけでも25社、それ以上の出版社に断わられ続けた原稿である。胸に秘めた苦しい思いが書けるようになるまでに30年、泣きながら2年がかりで書き、そして出版まで3年を要した。「多佳子さんが言ってることは正しい。でも、正しいことを書いたからと言って、人は読んでくれないんですよ。」と編集者に言われた。どんなに悔しくても信念を通すしかなかった、身長176センチの私の人生すべてを賭けた本となった。
女が大きいとどんなに差別的・暴力的な言動にさらされ続けるのか、日本語世界は、悩みを聞いてくれるどころか、口封じをしようとするどんなに残酷で閉鎖的な社会かを如実に例示してから、私は、あとがきの最後でもう一度訴えた、「もう私の顔を見て、でかい、とは言わないでください」
あれ以来、今度「でかい」と面と向かって言われるようなことがあれば、絶対に言い返そうと心に決めていた。ところが、である。冒頭に書いた通りのていたらくである。情けなかった。なんで言われへんのやろ。。。たとえ言えても、反発されるだけとはよくわかっているけれど、でも言わにゃ絶対にわかってもらえへんのに。。。
本を出して終わりでは決してなかった。本を出した今こそ、私は新たな出発点に立っている。いろいろな人からさらに多様な意見を聞いて、問題提起を続け、自分のこれまでの苦しみ、つらさをポジティブなエネルギーに転換することで社会に貢献して、この生を終えたいと思うのである。
読者の方々にお尋ねしたい。今の日本は「長身女性ブーム」だとか。今、売れっ子ナンバーワンと言われるお笑い芸人、南海キャンディーズの静ちゃんは身長182センチだそうですね。 「和田アキ子みたい」とか「静ちゃんみたい」とか言われたら、それは誉め言葉なんですか。
デイ多佳子 メールアドレス takakod@aol.com
ホームページ http://www.mycinderella.us/
掲載された人民新聞のコラム http://www.jimmin.com/doc/0471.htm