イリノイこぼれ話

 

 

Text Box:  立つ鳥跡を濁さず


先日、やっと行きつけのスーパーで、エコバッグを見つけました。わずか1ドルですので躊躇なく買いました。普段使ってきた出版社からのもらいものバッグは丈夫だけれど、底にマチがほとんどなく、あまり使い勝手がよくありません。それに比べると。。底面がほぼ正方形の形でばっちり。ファッション性のあるデザイナーバッグではないけれど、earth dayevery day…というメッセージがうれしく、るんるん気分で買い物です。(笑)

友人によると、他州やら、同じイリノイといえども、エコバッグやら店の紙袋を再利用すると、たとえわずかでもお金を戻してくれる店がある街もあるとか。日本のように、官主導というコンセプトがほとんど考えられないアメリカのこと、エコ度は店舗次第、住民の市民度次第のようで、ああ、私が住む田舎町も大学町なんだから、もう少し"磨き"をかけてほしいのですが。。。

我が家ではもう一つ、15年以上も前に、これまた他州で買った、今はぼろぼろのエコバッグをまだ使っています。メッセージはEnvironmental Options。堅いなあ(笑) Environmental Options からEarth DayEvery Dayへ―20年近くかかって、人々の日々の意識はほんのちょっとだけ"環境に優しく"なったのかも。。

環境といえば、アイオワ州に次ぐ全米第二位の生産量を誇るイリノイのとうもろこしを忘れるわけにはいきません。バイオ燃料ブームのおかげで、今年は、近所の畑のとうもろこしの成長は格別のようです。中には、とうもろこしが金貨の金色に輝いているように見える人もいるかも知れません。(笑)

わが家から西へ30分、広大な畑の真ん中にぽつんとあるのが、ロシェールの町に新しくできたエタノール工場です。建設許可申請中の数も含めると、イリノイにある、ゆうに60は超える工場のひとつです。去年の11月から稼動が始まり、年間5500万ガロンのエタノールを生産するこの工場に、とりたてていうほどの特徴はありませんが、工場を眺めていて思いがけずによみがえったのが、大昔、電車を待つ駅のプラットホームで、背後を猛スピードで通過していく貨物列車の車両の数を必死になって数えた幼い時間でした。いつも口を忙しく動かして、100以上は数えたような気がします。あの時と同じ黒い液体タンク?の連なりが畑の中へまっすぐ突き進んでいるではありませんか。ふ〜〜ん、エタノールってあれに入れて運ぶんだあ。数えようにも、さえぎるもののない空に向かって消え入るように小さくなっていくだけです。

ロシェールからちょっと南に下ったメンドータヒルズの大豆畑を吹き渡る風も今や金貨色かも。(笑) 青い空に切りこんでいくかのように、緑の農地から白いタワーの林がくっきりと立ち上がっています。その鋭いコントラストがとても気持ちいい。2003年に作られたイリノイ最初の公益ベースのウインズファームで、2600エーカーの農地にそびえる63のタワーから、ピーク時には50メガワットの電気が生まれ、年間総発電量1億1000万キロワットアワーズが、ロシェールなど約13000世帯に供給されているとか。高さ65メートル、羽の長さ25メートル、回転の直径52メートルという巨大なタワーは、野鳥の邪魔になるとか、騒音に不動産価値・景観の悪化を引き起こすと、いろんな反対の声が聞かれたようですが、訪ねたエルマー・ロードさんと奥さんのパールさんは、退職生活にはぴったり、趣味で農業も楽しめるし、と実に満足げでした。

Text Box:  そのロードさんだって、話が来た頃は、ウインズファームって何それ、牛や豚のファームなら聞いたことがあるけどな、って感じだったらしい。それが今や、全米はもちろん、オーストラリアやイタリー、イラクからも訪問者がある人気ぶりで、はい、日本人も行ってきました(笑) 
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300エーカーの農地に5本のタワーを建て、電力会社と30年の契約を結び、タワー1本だけで、とうもろこしを作るよりいい収入になるそうな。電力会社のウエッブサイトによると、だいたいタワー1本に3000ドルから5000ドルが地主に支払われるということですから、う〜〜ん、ロードさん、イリノイの風に吹かれながら座ってるだけで、「風とともに15000ドルは去らぬ」かな(笑)

そういえば、最近のシカゴトリビューン紙に、自分の庭にタワーをたて、屋根に太陽パネルを張り、自分が使う電力ぐらいは自分で作り出し、残った電気は電力会社に売ろうという人が紹介されていました。そこまでする体力も資金も使命感もないし、う〜〜ん、地球温暖化に温室効果ガス排出削減とむずかしいことを言われてもさっぱりですけど。。

でも、エコバッグを見ていると、幼いころに身体に刻み込まれた言葉を思い出すんですよ。。立つ鳥跡を濁さず、と。それはまた、都会育ちの私が、過疎のサウスダコタ生活で思いがけずに学んだ、自然との共生への思いでもあります。

 

Text Box:  広大で肥沃なイリノイの農地がはぐくむいのちと、そのいのちと地域風土が生む再生可能なエネルギーとの地産地消の循環システムに、いつか必ず消えていくとわかっている自分を時には重ねてみるー去っていく自分に何ができるのだろう。

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エコバッグのearth day, every dayに、なあんか大きな懐に抱かれている安心感を感じながら、今日も、るんるん買い物です。(笑)